※ 本文で言う「ちゃんとしたミュージックビデオ」とは、いわゆる”プロ”の手に寄って制作されたもの、解りやすく例えるならスペシャワとかでメジャーアーティストのそれの合間に流れてても見劣りしないもの、的なのを前提とします。素人作品や、素人撮影のライブ映像などは除外視します。
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はじめに MVを作らないミュージシャンは、看板をかかげないラーメン屋さんである
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もしあなたが車通りの多い国道沿いにラーメン屋さんを開業したら、まずは大きな看板を掲げると思います。
それは国道を通る多くのお客さんが看板を頼りに、入店を決めるからです。
だからきっとそこにお金を惜しまないはずですし、
ダサい看板や、マズそうな看板は使わないだろうし、
なにより「とりあえず始めたばっかりだから看板はそのうちでいいっか」なんてならないはずです。
ラーメン屋さんにとっての「看板」。
これに当たるアイテムがミュージシャンにもあります。
リスナーにとってこの「看板」がアーティストの第一印象を決める大きな判断基準となります。
なのにミュージシャンの多くは「看板」にお金をかけず、
ダサい「看板」、下手そうで人気なさそうな「看板」はざらで、
なにより「看板」すらかかげてないミュージシャンが普通です。
ミュージシャンにとっての「看板」、
それがミュージックビデオです。
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パート1 あまりミュージックビデオを作らない謎
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例え話しから、音楽の話へ戻りましょう。
まず、ご自身の音楽ファンとしてのライフスタイルを振り返ってみてください。
例えば雑誌やネットで見かけた、ラジオやテレビや街中で聞いた、友達に勧められた、そんなちょっと気になるミュージシャンがいたら、そのアーティストをチェックする時どうしますか?
まずGoogle検索したとして、ヒットすれば真っ先に見るのは
『動画サイトにアップされたミュージックビデオ(MV)』だと思います。
オフィシャルサイトやブログやSNSやCD/音源リリース作品のチェックより、先にMVを見る人がほとんどではないでしょうか。
MVを観て興味が更に沸けば他のMVや映像を漁ると思います。そしてやっとサイト、ブログ、SNSなどを見たりフォローしたり、CDやiTunesで買ったり、ライブに足を運んだり、その後の順番は人それぞれだと思います。
つまりミュージシャンにとって、極論ですがウェブサイトよりブログよりSNSよりCD/DLリリースより、まず真っ先に制作すべきものはMV、と言えるぐらい重要なアイテムなのです。
でも、例えば日本のセミプロやプロを目指してる無所属ミュージシャン、または低予算レーベル所属アーティストの分布を見てみましょう。
99% ウェブサイト/ブログ/SNSを持ってる
50% CDやDL作品がある
1% ちゃんとしたMVがあって動画サイトにアップされてる
(リサーチした訳じゃありません、主観的なイメージの数値です)
ぐらいだと思いませんか?
誰もが、アーティスト本人さえもが、新しい音楽の「入り口」として探し求めるMVを作らない。
あえて入り口を狭き門にしている、という事になります。
CD文化は衰退してるのに「CDアルバム作ろう!」とはなるのに、オンライン動画文化がここまで繁栄しても「ちゃんとミュージックビデオ作ろう!」とはならない謎。
こう改めて考えてみると不思議ではありませんか?
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パート2 もっとMVを知ろう!
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この際、もっと深くMVについて考えてみましょう。
●● ちゃんとしたMVの持つ効力
まずはその効力。
(1)気になるアーティストのチェックに誰しもが真っ先に使う動画サイトに自分達を検索対象に置く事ができる
というのは上記しましたが、それ以上にも
(2)自分達を良く、凄く、プロっぽく見せられる。これに関しては事項にて。
(3)自分達を紹介する時に、リンクや検索キーワードを教えるだけで、何よりも優れた「名刺」「デモ音源」「自己紹介」「インパクト」になる。また他人が他人に紹介する時にも同じ。
(4)一回撮ってアップしちゃえば、一生タダで勝手に自分達をPRし続けてくれる。
(5)世界的に広まる可能性すらある。
もう、良いことずくしです。良いことが制作費の10倍にも20倍にもなって返ってきます。
(実際僕たちもライブやメディアのブッキングを全てセルフで行ってますが、全くのノーコネクション・無所属・無名な僕たちなの全国100店舗以上のバー/カフェ/レストランやたくさんのラジオ局/テレビ局に出演を快諾いただいてるのは、ちゃんとしたMVがある事も非常に大きな理由だと思ってます。)
●● 「ちゃんとしたMV」を作ると「プロっぽく」見える?
MVが無ければ、無意識かもしれないけど心のどこかで「MVが無いアーティスト」とレッテル貼りをしてると思います。それはまれに良い意味な場合もありますけど(アマチュア好き層に向けてなど)、大抵の場合は「まだそういうレベルに達してない」「メジャーでない」「プロでない」といった評価にリンクしてる場合が多いのは(特に一般層に)、紛れも無い事実だと思います。
そしてそれはあなたやあなたの作品に対して興味を持つ人、ましてや対価を払おうという気になる人や、ライブに自分から足を運んでくれる人を減らす大きな原因になります。
逆に無名バンドでもMVがちゃんとしてればプロっぽくor駆け出しのプロ、なにより「ちゃんとしてる」風に見えるし、例えば知人友人がライブハウスでワンマンやっても行くどころか驚きすらしないと思いますが、MVをアップしてたら絶対に見ちゃうし、カッコ良ければ「凄い、プロっぽい!」って驚きますよね。商品価値や集客に関してもしかり、です。この差ってデカイと思います。
ではなぜ「MV」=「プロ/プロっぽい」と結びつくのでしょう?
(1)「ちゃんとしたMV」を作ってるミュージシャンが極めて少ないから
ちゃんとしたMVを撮ってるアーティストって、無所属だったりあまりお金かけてくれないレーベルだったりすると、ゼロに等しいんじゃないか、ってレベルで、いないですよね。みんな大抵YouTubeにアップしてるのは、素人撮りのライブ映像が9割で、残りの1割弱でMVを作ってるアーティストがいても、素人作品見え見えだったりします。
その反面、いわゆるメジャーアーティストや著名アーティストは、必ずちゃんとしたMVがありますよね。
単純に、ちゃんとしたMVを作ってるアーティストは、極めて少ないんです。少ないから、その小さな壁を超えるだけで、「プロ側」に自分を持って行く事ができるんです。
(2)一般の人でも「ちゃんとしたMV」は見分けがつくから
不思議なもんで、一般の人は、1万円のバイオリンと1億円のバイオリンの音の差は聞き分けられませんし、高級食材と偽物食材を食べ比べてもどちらが高いか解らなかったりしますが、ホームビデオで撮った映像とプロの映像は、何故か見分けられます。
あなたでも、例えば被写体が同じでもiPhoneで素人が撮った映像とプロカメラでプロが撮った映像は、見分けつくと思います。これは普段からテレビでプロクオリティの作品を多く目にしてるからだと推測します。
だからこそ、ちゃんとお金をかけてちゃんと専門家が作ったちゃんとしたMVであれば、それが一般の人にも伝わる。要するに作りさえすればその「プロさ」がしっかりビューアーに伝わるので、素人作品を含む「その他大勢」と一線を画する事ができます。
●● MVをみんなが作らない理由
こんなに良いことずくし、、というか必須条件とも言えるMVなのに、何故みんな作らないのでしょう。
憶測や、自分の過去を振り返ってになりますが、以下の事が考えられます。
(1)CDプレス/流通と違って、MVを作るノウハウが広まってない
(2)請け負う業者さん/プロクリエイターさんが少ない、そして探したりマッチングしたりするのが難しい
(3)純粋に「MVを作る」という行為を、セルフでやる、という意識が広まってない
※ちゃんと作るのは高いと思って諦めてる場合もあると思いますし、確かに安くはありませんが、CDプレスなどには平気で割と高い値段払うので、値段の問題ではなく、認識や意識の問題の方が遥かに大きいと思います
などの理由が挙げられると思います。
●● なんで素人作品やライブ映像じゃダメなの?
余談になりますが、次に前置きした通り「なんで素人作品やライブ映像じゃダメなの?」という話です。
ダメじゃ、ないです。素人作品やライブ映像だって、上記「効力」の多くをカバーできるので、無いよりマシな場合もあります。
ただ、皆さんもたくさん見てきてるから気付いてると思いますが、
・下手バレバレだったりお客さんガラガラだったりするライブ映像
・いかにも「素人が作りました」という、あえて言いますがダサくて痛いMV
を、アーティスト自身が本人のチャンネルに堂々と載せてる場合を多く見ます。
これじゃ、ハッキリ言って「私たち素人ですよ、センス無いですよ、人気も無いですよ」というネガティブプロモーションです。
自分で作った素人作品MVやラフなライブ映像等はもちろんあっても良いと思いますが、
やっぱり、それなら”ちゃんとした”MVは少なくとも1つはあって、一番トップに載せておいて欲しいと思います。
自分達がショボく見えるだけなら、余計な映像は無い方がマシだと思います。
●● MVの作り方
「じゃあどうやって作るの?」って気になる所だと思いますが、先述の通り『請け負う業者さん/プロクリエイターさんが少ない、そして探したりマッチングしたりするのが難しい』ので、ハードルは低くないです。
まずは「MV制作を本業としてる人、もしくは本業を目指していてそれなりの技術や経験のある人」と出会う事だと思います。
SNSで呼びかけてみたり、音楽業界の人に聞いてみたり、場合に寄ってはネット検索して業者さんに頼むのもアリかもしれません(経験無いのでオススメはできませんが)。そして過去作品を観て判断、仕上がりと費用を綿密に相談した上、お願いしましょう。もちろんこの際に自分達を綿密にプロデュースするのが最重要ポイントとなります。
価格も、最低でも10万円はかかると考えておいた方が良いと思います(もちろん担当する人/ロケによって大幅に変動します)。高く感じるかと思いますが、上記の通り、非常に大切な投資であり、頻繁に必要となる経費ではありません、極論1本あれば事は足ります。
しばらくメンバー間で貯金してでも、頑張って渾身の1本を制作した方が良いと思います。
ちなみに僕たちはたまたま人伝いで「門田博喜さん」( https://www.youtube.com/user/kadotahiroki/videos )という方に出逢い、非常にセンスとクオリティの高い作品 ( Hamburger Song https://www.youtube.com/watch?v=0qwsxroRyFc ) を作ってもらったので、以後もずっと同じ方にオファーして過去3作品を撮ってもらってます。とてもラッキーな出逢いだったと思います。
僕はPV制作の専門家でもないですし、このコラムはPV制作方法についてではないので”ススメ”っぱなしでその受け皿を提案できず申し訳ないです。
余談ですが、上記の通り「PVを作って欲しいミュージシャンと、作りたい映像クリエイター」の間には大きな「やり場のない需要と供給」があると感じてます。つまりここには大きな要望=ビジネスが眠ってます。
「PVを作って欲しいミュージシャンと、作りたい映像クリエイターのマッチングサイト」、あったら便利だし流行ると思うので時間と資本があればやりたいぐらいですがが、、、どなたか是非作ってください!
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いかがでしたでしょうか?
多少大袈裟に言ったり過大評価した部分もあるとは思いますが、MVの重要性、そして多少高額なお金を支払ってでも、イイものを、なるべく早い段階で、制作した方が良いという主張は伝わったと思います。
「事務所と契約したら」「レーベルがついたら」などとMV制作に関しては待ちスタンスが一般的だと思いますが、少しでも本文のような気付きが広まり、もっとそれを作る事が当たり前になって、結果的にそれがミュージシャンと映像クリエイターのマッチングがもっと簡単になったり、もう少し制作費もおさえられるような市場になると嬉しいな、と思います!
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(後日 2013/10/3 追記)
僕のタイムラインに流れてきた、ライブハウス中心に活動してた頃の盟友ガムシロップのプロモーションビデオ。これ観てビックリしました。
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【HD】ガムシロップ CM「青い玉と陽の光」バージョン
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着目すべき点は『ワンカメワンカットなのに、カメラのセンスが最高に良いから凄くカッコ良く見える』という事です。(もちろん曲の良さは大前提)
以前ミュージックビデオの重要性を語った事があるけれど、これはその見本中の見本みたいな作品だと感じました。
一切の豪華さや技術(=必然的な予算増大)を用いる事なく、曲の良さを土台に、ディレクターのセンスと出演者(ボーカルのモモ)の表情力や演技力のみで、”一流”と言える作品に仕上がってますよね。
彼らがどういう人選でどのくらいの予算をかけたかは知らないけれど、僕ら無所属ミュージシャンでも、センスがマッチするカメラディレクターとの出会いと最低限の予算さえあれば、十二分に効果的なミュージックビデオは制作できる事がこの45秒に集約されてると思います。
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Sleepyhead Jaimie すわだいすけ
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● 過去のコラム
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アーティスト名 Sleepyhead Jaimie
アルバム名 Hamburger Diaries
品番 ATSP-1003 価格 ¥2,000
以前にも書きましたが、自分達の飯の種ばらしている様に見えますが、大丈夫ですか?自分達が食って行く為には多少のしたたかさも必要なのではないでしょうか?
カプリコさん
コラムでシェアしてるノウハウやアイディアは僕たちの「飯の種」じゃないので、大丈夫ですよ!(笑) ご心配ありがとうございます!