随分前になりますが著名音楽プロデューサーの佐久間正英氏が
『音楽家が音楽を諦める時』http://bit.ly/18QrUXc
というブログを発表して非常に話題になった事は、音楽関係者であればご存知だと思います。
そして今日、たまたまfacebookのタイムラインにとあるミュージシャンさん(KEITAさんという方みたいです)の記事が流れてきましたので目を通しました。
『音楽の話、音の話』 http://amba.to/18y0rqD
そこでしきりに批判されていた、ライターかさこ氏のアンチ佐久間氏論ブログがこちら。
『金がないから「いい音楽」作れない?~ビジネス感覚なき職業音楽家の末期症状』http://blogos.com/article/41639/
正直、僕、佐久間氏のブログは当時から何度読んでもピンときませんでした。
その理由が今日、上記2記事を読んで初めて解ったので、ちょっとコラムにしてみました。
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● それは『個人的に理想としてる形の録音音楽』ではありませんか?
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単純に思ったのは、
【プロデューサー】佐久間氏よりも
【ミュージシャン】のKEITA氏よりも
【ライター】のかさこ氏の方が、
よっぽど『音楽の力』を信じてるな、という事で(笑)
もちろん僕だって音楽家のはしくれなので、先のお二人が仰る事は120%理解できます。
ただ、彼らが言ってる事は、
『音楽』じゃなくて、
『(芸術としての録音)音楽』ですらなくて、
『(個人的に理想としてる形の録音)音楽』
なんですよね。
だってそうでしょう。
棒きれでバケツを叩きながら歌っても『音楽』なので、そこにお金は一銭もかかりません。
アパートの部屋でiPhoneセルフ録画したって『芸術としての録音音楽』なので、そこに莫大な予算はかかりません。
高級機材を使って
高級なスタジオで
高級な技術者に録音してもらった音楽。
いわば「90年代型録音音楽(=佐久間さんが理想としてる形の録音音楽)」が録音音楽として最善、という個人的理想を前提にして初めて彼らの論理は成立する訳です。
もちろんそれは音楽の1つの崇高な形で、失うにはあまりにもったいないと思います。
それが例え廃れゆく宿命だったとしても、可能な限り、延命すべきとも思います。
だから先述の通り僕も彼らの仰る事は、理解は、できます。
ただ彼らはそれを『個人的に理想としてる形の録音音楽』なんだと自覚されてない気がします。
だから、『音楽』という全体論で捉えてるかさこ氏のような意見と、平行線を辿るのだと感じました。
(佐久間氏が続編で書かれていた「予算をかけたレコーディングの方がアーティストの為になる」という話も理解はできますが、、、http://bit.ly/18jE61P )
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● いゃいゃ、高級レコーディングできなくなったり、CD売れなくなっても音楽は死なないから!
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話は飛びますが。
よく環境保護の視点から
「地球を救え!」
なんてフレーズ見かけますよね。そういうの見ると僕は正直
「いゃいゃ、地球は人間ごときの力じゃ何があっても死なないから!」
って思っちゃいます(笑)
それってエコじゃなくてエゴなんですよね。(悪い意味ではなく)
主語はあくまで「地球」じゃなく「人間」、いやむしろ「自分の快適な人生」の為なんで。
それと同じで、
「音楽を救え!」
といった論調の意見を見かけると、
「いゃいゃ、高級レコーディングできなくなったり、CD売れなくなっても音楽は死なないから!」
って思っちゃいます(笑)
これも実は主語は『音楽』じゃなく『個人的に理想としてる形の録音音楽』なんですよね。
完全にエゴです。(これも悪い意味ではなく)
極論ですが、
例えCDショップが1つ残らず消え去っても
ライブハウスが全て廃業しても
iTunesもSpotifyもYouTubeなくなって
例え今ある全てのレコードと全世界のアーティストを失って
この世から全てのスピーカーとイヤホンが消し飛んでも!
音楽は死にません。
それこそ棒きれでバケツを叩く人が現れ
そこに軽快なメロディーをハミングする人が現れ
木箱に弦を張って奏でる人が加われば
それがまた音楽になります。
音楽が死に絶える事なんて、絶対にありえません。
なんなら例えば時代の潮流が「音楽を録音するなんてダサい」となり、世の中のミュージシャンが録音する事をやめてしまったら?おおいにありえる事だと思いますし、『音楽』は繁栄し続けながらも、録音音楽はアンティークに、佐久間氏のような論理は時代錯誤となってしまう訳です。
結局かさこ氏が仰ってる『音楽』、そして広義の『音楽』とはそういうもので、
結局佐久間氏が仰ってる『音楽』とは狭義の『個人的に理想としてる形の録音音楽』なんだと感じます。
だから初めから佐久間氏が
「僕が作りたいような音楽をできない時代になってきてるから辞めるかも」
という話をしていれば、
佐久間氏ファンの方々は「そんなの嫌だ!辞めないで!」となり、
特に興味が無い人は「時代の流れだな」となり、
それだけの話だったんだと思います。
それを佐久間氏の
『個人的に理想としてる形の録音音楽』を
『芸術としての録音音楽』時には『音楽』そのものと混同して捉えられる論調だったので、
自分を含め違和感を(後日談を読んでもなお)感じたりする人が多かったのだと思います。
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● 終わりに
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もちろん、僕もいちミュージシャンなので、高級レコーディングしたいですよ。去年リリースしたアルバム「Hamburger Diaries」もそれこそ予算の関係でDIY作品だったので至らない点が多くある事は自覚してますし、予算次第でもっと”良くする”事はできたと思ってます。こうして自分にもおおいに関係してるので、高級レコーディングができにくい時代に移り変わってる事に対しての残念な気持ちは少なからずあります。(まぁ今が音楽業界全盛期だったとしても拾ってもらえてる自信は全くありませんが。笑)
でも僕は『音楽』が向かう未来に関して、全然悲観的に思ってません。その理由は3つあります。
【1】高級レコーディングされた録音音楽は減っていくかもしれませんが、ゼロにはならないでしょう。(いつの時代もモンスター級アーティストは生まれてくるので)
【2】”良き時代”に録音された、それこそ佐久間氏が胸を張れるような作品も、ロバートジョンソンの録音が今もあるように、これからもずっと残り続け聴かれ続けると思います。
【3】なにより佐久間氏は佐久間氏がやりたいような音楽をできなくなったかもしれませんが、その反面僕たち無名無所属なアーティストは、それこそプロデューサーやディレクターの目に止まらずとも低予算でレコーディングからCDプレスからPRから流通/DL販売まで、やりたい音楽をやりたいようにできるようになりました。
残念ながら,確かに佐久間氏の『個人的に理想としてる形の録音音楽』にとっては暗黒時代なのかもしれません。
でも、皮肉にも『音楽』にとっては、黄金時代の幕開けなのかもしれませんね。
僕たちが心配せずとも、大丈夫ですよ。
50年後も100年後も、この世は素晴らしいアーティストによる素晴らしい『音楽』できっと溢れてます 🙂
p.s. 僕自身ドンピシャで佐久間さん世代で、ジュディマリを始めとし彼のプロデュースワークを過去に多く聴いてました。言うまでもありませんが彼は音楽的に雲の上の存在であり、僕のように細々と何とか続けているミュージシャンには想像もつかないような経験や知識をお持ちの上のご意見なので、物申すのも恐れ多いのは承知でしたが、氏の先の記事を初めて見て1年たった今も変わらずモヤモヤとした晴れぬ想いがあったので、あえてまとめてみました。With all due respect.
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Sleepyhead Jaimie すわだいすけ
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アーティスト名 Sleepyhead Jaimie
アルバム名 Hamburger Diaries
品番 ATSP-1003 価格 ¥2,000