僕のライブハウス時代からのバンド仲間がツイッターで
「ライブハウスで500円のビールやジュースみんな呑んでるのに、500円の音源すら売れないってキビしすぎるよね。」「音源の価値低すぎるだろっ」「ビール以下、という現実」
ってつぶやいてました。
でもそれは音楽や音源の価値が低いのではなく、
「音源を買ってもらう際のハードルを高くし過ぎてる」
からだと思うから、全然嘆くような事じゃ無いと感じます。
自分も似た経験を経ているので、色々思う事があって綴ってみようかと思いました。
長くなりますが、興味ある方はぜひお付き合い下さいね!
まずはその「ハードル」を、1つ1つ説明してみます。
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● パート1『購買を妨げているハードルは何か』
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:: ハードル1『そもそもお客さんはライブを見るのに既に1500円〜2500円既に払ってる』
そこにお客さんがいる時点で、その人はライブハウスの外でその他商品/サービスを買わずに、それなりの価格を払って、そのアーティストの音楽や人柄に触れに来てる。つまり、十分ビールより高い価値を見出してもらってると思うんです。既に欲求(ライブ音楽や触れ合う時間)を充足してる人に、更に財布からお金を出せ、というのはそもそもがかなり難しい話。
:: ハードル2『ライブハウスはCD(-R)を買う場所じゃない』
ライブハウスは文字通りライブを観たり、そのアーティスト本人に触れる場所であって、CD(-R)を買う場所じゃない。普通に考えれば、CD(-R)を買う場所はタワレコなどCDショップ、またはAmazonなど通販ですよね。ラーメン屋さんで「カップラーメンが売れない!」って言ってる状態をイメージすれば解りやすいかもです。これまた始めから難題な訳です。
:: ハードル3『そもそもCD(-R)というハードの需要が極めて少ない』
そもそもお客さんの大半はCD(-R)で音楽を聞いてないし、用途があったとしても1度リッピングする程度。中にはジャケやケースが欲しい人もいるかもしれないけど、まぁ少数派である事は間違い無いでしょう。
需要の無い商品は、安かろうが質が良かろうが、売れない/売るのが極度に難しいのは当たり前な事です。
:: まとめ
要するに、本来、本気で「音源を売りたい」と思ってるのであれば、
● 事前PR等で、お客さんが音源を買う事を目的としてるタイミングで
● 音源を買う意識になりやすい場所(CDショップなり、Amazonなり、iTunesなり)
● 使いやすい形で(今だったら間違い無くデータDLが一番でしょ)
提供して、初めて、商売としてのスタートラインに立てるというか、常識的に考えてそうしないと売れないのは当たり前です。
早い話が、ミュージシャンだろうが、アーティストだろうが、ライブハウスだろうが、良くも悪くも市場の原理や消費社行動は、いたって正常に働いていて、多くの「CDが売れない現象」は、それらを無視しているからに過ぎないと思います。
ちょっと専門的な事になりますが、マーケティングの基礎中の基礎で「4P」というのがあります。その4つのPとは、
Product = 製品
Price = 価格
Promotion = 広告
Place = 販売場所
です。この4つを最適に調整する事によって、初めて商品を購買へと導く事ができる、という事です。
「500円なのにCD(-R)が売れない」という嘆きは、4Pの中、1つのP(Price)のベクトルでしか考えられていません。
価格は安いとしても、「製品は本当にその形態でいいのか」「ちゃんと買う気にさせるPRをしたのか」「買うに適した場所で売っているのか」はスッポリ抜けています。
だから、嘆く必要は無いと思います。
嘆く前に、考える事、実行できる事がたくさんあるからです。
(「いいやそれでも断固としてライブハウスで、CD(-R)で売りたいんだ!」という方は嘆くしかないかもですけど。笑)
次のセクションでは、聞こえてきそうな異論に対して、説明しますね。
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● パート2『でも!!』
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:: 反論1『でもビールは売れるじゃん!!』
ライブハウスに高いお金を払って来てるお客さんは、先述の通り、ライブミュージックを楽しみに、そしてアーティスト本人と過ごす時間と経験を楽しみに来ています。だからちょっと酔っぱらった方が音楽を楽しめる人はその出費を惜しまないだろうし、アーティストと乾杯できたり少しでもグラスを交わしながら話せたりするのであれば、同じ500円ならその場を更に高揚させてくれるビールの方が手軽に手が伸びるのでは、って思います。
(それ以前に、その500円って、ドリンク代として強制的に受付で徴収されてる事の話じゃないですか?僕は経験上、ライブハウスってそんなにたくさんお酒が出るイメージありません。)
:: 反論2『でもここでしか買えないんだよ?』
「ライブハウスでしかCD(-R)を買えない」「iTunesなどDLは提供してない」これらは良く言えばプレミア価値に繋がるけど、仕方無くそうしてる場合は「ここでしか売れないからここで売ってるんでしょ」って目で見られてます、間違い無く。お客さんだってそのぐらい見れば解ります。もちろんそれは買う気だって削がれますよね。
【ニーズに答えられるのにあえて答えない】のはプレミア価値の創造だけど、【ニーズに答えられない/やり方を知らない/知ってるけど面倒】なのは商売する気がない、むしろレベルが低いアーティストと意識的なり無意識的なり、思われます。CDショップやAmazonで買えるのに「あえて」ライブハウスでアーティスト本人から買う事に希少価値があるんではないでしょうか。
さてCDを流通させていない事、iTunes等DLサイトに掲載していない事、これらを本当に自分とその商品を神聖化する為にできるのに「あえて」やってない?
:: 反論3『でも人気あるアーティストは物販でCDとかグッズ売れてるよ!?』
確かに人気アーティストであれば、市場の原理が歪んだり、覆ったりする事が多々ありますよね。誰しもが、好きなブランドのアイテムに対しては時間も価格も必要以上に費やします。AKBだって同じ商品をいくつも買うなんて、普通で考えたらありえない現象です。
でもそれは商品(アーティスト)にブランド力があるからできる事です。運営サイドは、商品が何であれ、ブランドを構築する為に多大な投資をしてきて、その戦略が成功させてるからです。
だから早い話が「そりゃもっと人気出ないとライブハウスでCD(-R)なんて売れないよ」というバッサリとした話になってしまいますね。
でも繰り返しになるけど、少なくともお客さんは既に「あなたのライブに対価を払って足を運んでる」って時点で、大きな目的は達成してる訳だから、そんなに悲観的になる必要も無いと思います。そしてライブハウスでCD(-R)を売る事がどれだけ難しいかは、先述の通りです。
それを覆す程の人気がまだ無い事は自覚して、もしかしたら人気を出す為のプロデュースは修正する必要があるかもしれませんけど、それは全く別のベクトルの話ですよね。
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● パート3『おわりに』
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色々難しく書きましたが、おわりに、それを全てシンプルに1行でまとめてみます。
その500円のCD(-R)が売れない理由、上記を全てまとめると実は一言で済みます。
「本気で、それを売る事を商売として、食っていく気が無いor足りないから」
その一言に尽きると思います。
これを読んでドキッとした人、いると思います。
僕もライブハウスを中心として活動してた頃だったら、ドキッとしたと思います。
僕自身、全く同じ悩みを抱え全く同じ道を辿ってきたので、振り返るとそう思います。
今でも、日々肝に銘じないといけない事だと自戒も含め書いてます。
CDでもビールでもラーメンでも何でも、生半可な気持ちで適当に売って、売れるモノなんてこの世にありません。(特にミュージシャンは原盤制作の段階で精魂を込めても、販売の段階で怠ける傾向があると思います)
「あなたの本気が足りない」なんて偉そうに聞こえるかもしれませんが、いや、そういう事じゃなくて、こう考えてみて下さい。
「ビールより価値が低い」って言うけど。
ビールメーカーの人達が、どれだけの頭脳/技術/資本/人材を投入して、製品開発から営業までしてるか、考えてみて、それでも自分の、同じ500円のCD(-R)の方が価値が高いと言えますか?
正直、胸を張って「勝ってる」と言える人は、中々いないのではないでしょうか。
結局、最終的にはそういう事だと思います。
売れないのは、才能や人気や商売上手さの差なんかはサブ的要因に過ぎなくて。
競合(ビールであれ他アーティストであれ)に比べて、あなたの「必死さ」が、悲しいかな、負けているから。それぐらいシンプルな事なんだと思います。そしてそういうシンプルな事に、お客さん達は心や体を動かされて、その価値を貨幣を引き換えに手に入れたいと思うのだと感じます。
今、全国をキャンピングカーでまわり、各地のお店でライブを観てもらった方々にCD/グッズ購入や投げ銭をしていただいて生計を立てている身として。
そして嘆いている方達と同じようにライブハウスで生まれ育ち歩んできたミュージシャンとして。
こんな風に思いました。
おわり
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いやー、想像を遥かに超える長文になってしまいました(汗)
そしてツアーの合間合間にこれ書くのに4日ぐらいかかりました(笑)
ここから「じゃあアンタはどうやってんだよ」って所に答えていこうかと思いましたが、さすがに長過ぎるのでそれは次の機会にしたいと思います。
少しでもミュージシャンの皆さんにとって、ふとした気付きになれば幸いです!
お付き合いありがとうございました!
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Sleepyhead Jaimie
すわだいすけ
※ 続編書きました!
「たった500円なのにCD(-R)音源が売れずに嘆いていた僕たちが今は音楽で食えてる理由」
● オフィシャルサイト
● Hamburger Song
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アーティスト名 Sleepyhead Jaimie
アルバム名 Hamburger Diaries
品番 ATSP-1003 価格 ¥2,000
本気や必死さの結果ががお金になって本人に返るな話がとてもおもしろかったです。
きんたさん
ありがとうございました!今後ともよろしくお願いします。
私は音楽CDではありませんが、ビジネスCDを発売しているので大変勉強になりました。
ありがとうございます。
岡田さん
ありがとうございます!今後もSleepyhead Jaimieよろしくお願いします!
面白かったです。一週間前に読んで、それから考えていたことを文章にまとめてみました。ちょっと主旨とは異なるかもしれませんが・・・。
本気で音楽で食っていくために音楽を売る方法
http://jassmaz.hatenablog.com/entry/2013/04/23/234942
jassmaz さん
ご丁寧にありがとうございました!